GCPSO−クロウ編−
〜怒れる吸血鬼とケーキ怪獣〜

片桐 / 著



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突然の爆発と轟音がその家の半分を根刮ぎ吹き飛ばした。
 
猛煙のせいで視界は最悪的に悪い。レイマールのメイファは、一緒にお菓子作りをしていた褐色の肌が特徴的なフォマールのジュエルをも、猛煙に負けずに探した。

「ジュエルちゃ〜〜〜ん!」
 
呼び掛けに微かな反応があった。
 
メイファは気配を頼りに、ジュエルの元へと急いで駆け寄る。

「大丈夫、ジュエルちゃん!?」
「イテテテテ・・・・・あっ、メイファちゃん!」
 
ジュエルは、顔がススだらけになっている以外は大した傷を負っていなかった。メイファ自身もそうだが、あの爆発で二人が無傷なのは奇跡である。
 
お互いススだらけの顔を見て、二人は笑い合おうとしたが、次の瞬間、辺り一帯に魔獣の咆哮が響き渡った。
 
メイファは自分の目の前に、巨大な異形の生命体が居ることに気付く。
 
その姿は全長十数メートルの巨大なカニ。
洞窟エリアに棲息する巨大カニ型エネミーであるパンアームズに似ていた。

「アレって、まさか、私達の作ったケーキ??」
「あの体はそうだよね・・・・・・・」
 
二人は呆然と、体が巨大な三段重ねのソフトケーキで出来た巨大カニを見上げていた。そして、自分達は夢を見ているのではないか、と二人はお互いの頬をつねる。

「夢じゃないね・・・・・・・・」
 
メイファの言葉にジュエルが頷く。
 
ジュエルは、その凶悪的かつ破滅的で絶望的な料理の味と腕の為に、恒星間移民船団パイオニア2内の全ての料理教室から入会拒否されていた。
 
そんな彼女の現状を哀れに思ったこの家の家主であるヒューマーのデュオは、週二回の割合でジュエルにお菓子の作り方を自宅で教え始めたのである。
 
そして、今日は日頃の成果を試そうとメイファと協力して、三段重ねのソフトケーキにチャレンジしていたのだった。
 
二人が呆けていると、巨大カニは不意にその場から猛然と走り去ってしまう。
 
我に返ったジュエルの顔が青くなった。

「もし、地上階に出たら・・・・・・」
 
二人の脳裏にパイオニア2本船内で一昔前の怪獣映画のように暴れ狂う巨大カニの姿が浮かんだ。
ジュエルの顔が卒倒寸前まで青くなる。

「後を、追わなくっちゃ・・・・・・」
「それは、私の役目です」
 
慌てて巨大カニの後を追おうとしたメイファと止めたのは、大きな買い物袋を両手に持ったまま引きつった笑みを浮かべるデュオだった。

「でも!」
「お二人はジャンクさんを・・・・・」
 
買い物袋を地面に置いたデュオが指差した先には、全身ススだらけでうつ伏せに倒れているジャンクの姿があった。

「パパ!」
「あわわわ、ジャンクさん!」
 
恐らく、巨大カニの姿が強烈すぎた為だろう。
信じられないことに、二人は今の今までジャンクの存在を完全に忘れてしまっていた。

「・・・・・行きますか」
 
半壊した自分の家を見上げながら、デュオは小さく呟いた。
 
デュオの横顔を見たメイファの顔が青くなる。
 
ジュエルはデュオに聞こえないようにメイファに声を掛けた。

「どうしたの??」
「デュオさん・・・・怒っているわ」
 
普段通りの顔をしているデュオだったが、その瞳は笑っていなかった。
 
誰でも唐突に自分の家を半分ぶっ飛ばされて怒らない者はいないだろう。
 
ジュエルの半ば青ざめた顔でデュオの横顔を見つめた。

「メイファさん、ジュエルさん。あの怪獣を退治してきますから、ジャンクさんの介抱は頼みましたよ・・・・・」
 
デュオの言葉に二人は何度も頷いた。
 
必要以上に頷く二人を見てデュオは苦笑を浮かべる。
決して他意はなかったのだが、デュオの苦笑を見て、二人は抱き合いながら短い悲鳴をあげた。

「我が名はデュオ=アライブ。我が主命に於いて命ずる。我が魔力を糧に、我を彼の者の元へと送りたまえ」
 
空間跳躍マジックに必要な詠唱を唱えたデュオの姿が虚空に消え去った。
 
転送先の惨状を見たデュオは引きつった笑みを浮かべる。
予想以上の破壊力だ。

「これは・・・凄い・・・・・」
 
二人の合作料理の凄まじさは重々承知していたつもりだったのだが、回を重ねる毎に凶悪化する二人の合作料理は進化し続けていた。
 
デュオは巨大カニの姿を探そうと気配を探る。
 
何気なくデュオが目の前のビルを見た瞬間、その三階建てのビルが根刮ぎ爆発した。
 
見ているこちらが気持ちよくなるほどの徹底的な破壊。
破壊主は言うまでもなかった。

「ガニ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
 
ふざけているとしか思えない雄叫びを上げながら、巨大カニが倒壊したビルの向こうから出現した。
 
一部始終を見ていた地下街の住人達が、パニックを引き起こして一斉に逃げ始める。
 
逃げ惑う住人達を掻き分けながら、デュオは巨大カニに迫った。

「食べ物は粗末にしたくありませんが・・・・成仏して下さい」
 
デュオは一気に巨大カニの左ハサミ目掛けて跳躍した。
 
身体を一気に回転させながら右回し蹴りを放つ。
 
派手な破砕音と共に巨大カニの左ハサミが粉々に砕け散った。

「ガニッ!」
 
巨大カニは突然の敵襲に一瞬戸惑ったが、その怒れる双眸で落下中のデュオを見据えながら、右ハサミを振り下ろした。
 
先に着地したデュオの頭上に巨大カニの右ハサミが迫る。
回避する余裕はなかった。
 
デュオは両腕を交差させて真正面から振り下ろされた右ハサミを受け止める。
 
周囲の地面が一気に陥没した。

「この、馬鹿力っ!」
 
デュオは巨大カニの予想以上の力に驚きながらも、全身の力を抜いて、巨大カニの力のベクトルを少し曲げてやった。

「ハァ!」
 
巨大カニの巨体が宙を舞う。
デュオが背負い投げ然に投げ放ったのだ。

「まったく・・・・今日の運勢は最悪ですね・・・・・・」
 
投げ飛ばされた巨大カニはゆっくりと立ち上がり、体勢を立て直しながらデュオに迫った。
その双眸は怒りに染め上がっている。
 
デュオは巨大カニの姿を正面に見据えながら、小さく呟いた。

「我が名はデュオ=アライブ。我が主命に於いて命ずる。我が意志よ、形となりて、我が意思よ、刃となりて、我が意を阻む者を斬刑に処せ!」
 
デュオの詠唱によって解き放たれた魔力が、大気中のフォトン粒子と結合して、一つの形を成した。

「武器練金マジックは成功確率が低いのですが・・・・・どうやら、成功したようですね。これなら、リライアンスさんの依頼も簡単に済ませそうですね・・・・・」
 
デュオは武器練金マジックによって生み出された一振りの長柄の大鎌を見つめながら満足気に頷いた。
全身白銀色の美しい鎌である。

「それでは、死になさい」
 
デュオは白銀の鎌を無造作に振り上げた。
 
巨大カニは断末魔の雄叫びを上げることなく一刀両断。
そして、巨大カニはその場に巨大なクレーター跡を残すほどの大爆発をして、この世から完全に消え去った。
 
爆発の瞬間に空間跳躍して難を逃れたデュオだったが、自宅に戻るや否や、力無くその場に座り込んでしまう。
 
目の前のジュエルとメイファは、申し訳なさそうに小さくなっていた。

「ごめんなさい・・・・その、帰ってきたら、お腹が減っているだろうって思って・・・・・」
 
デュオの視線の先には全長十数メートルの巨大オニギリが飛行していた。
 
両端から猛禽類と思しき翼が生えている。
そして、右翼の付け根部分には、ジャンクが頭から突き刺さっていて、苦しそうに藻掻いていた。
 
メイファとジュエルに悪気はない。
それを知っている為に、怒るに怒れないデュオは、引きつった笑みを浮かべながら、
飛行オニギリの「オムスビ〜〜〜〜〜!」という雄叫びをBGMにジャンクの救出方法に思案を巡らすのであった。

head.gif

− あとがき −

どうも、今晩はw
 
GCPSO−クロウ編−〜怒れる吸血鬼とケーキ怪獣〜は如何でしたでしょうか?
 
お楽しみ頂けたら、幸いです。
誤字、脱字の類がありましたら申し訳ありません。
 
今回はコメディタッチの作品です。
 
ちゃんと、面白かったですか?
コメディになっていましたか?
 
若干、一名ほど台詞もないのに一番悲惨な目にあっていますが、平にご容赦下さい。
 
さて、今回の補足説明はEP3での主人公となるキリトの簡単な初期設定をご紹介します。
なお、これはCGPSOで作成したキャラなのでEP3では少し姿やIDが変わる可能性があります。
また、初期設定なので、多少変更する可能性があることをふまえて、見て下さい。




    GCPSO−EP3編−初期設定

名前:KIRITO(本名:KIRITO=V=ALIVE)
年齢:17歳
職業:HUmer
ID:REDRIA
口調:一人称は俺。基本的には敬語だが感情が高ぶると乱暴な
     口調へと変化する。
身体的特徴:ワインレッドの長髪をポニーテールにしている。
           ヒューマースーツは白2。中肉中背の平均的な
           体躯。 両親譲りの美形。
設定(初期):デュオとメイファの間に生まれた
             ヴァンパイアハーフ。
             受胎した際は人間だったが、その後、メイファは
             デュオによって高位吸血鬼となり、高位吸血鬼と
             なってから出産した為に、通常のヴァンパイア
             ハーフよりも、吸血鬼の血を濃く受け継いで
             いる。しかも、質の悪いことに吸血鬼特有の
             異性を誘惑するテンプテーション(俗に言う
             エロビーム)を意識的に完全に制御することが
             出来ない。
             明朗快活な性格で硬派を気取っているが、
             単に女性に免疫がないだけである。
             総督府側に所属し、些細な事件から、
             九つ揃えることによって超常的な力を手に
             入れることが出来る神秘のカード
             “九天魔符(きゅうてんまふ)”を巡る戦いに、
             否応なく巻き込まれてしまう。
             キリトは九天魔符“滅(メイス)”と
            “切(セピレード)”の二枚を所有している。

九天魔符(初期):
 現世に九つ存在する神秘のカードの総称。
 大きさは横5p×縦15pと以外に大きい。
 個々のカードそれぞれに高い魔力が封印されており、
 カードを再生させることによって様々な超常的な能力を
 発揮する。
 カードの裏にはその能力を一言で現す呪言文字が刻まれている。
 古代からの伝承では九つのカードを揃えた者には、
 神をも越える魔力が与えられると伝えられている。
 現在判明しているカードは六種類。名前と読み方は以下の通り。

 九天魔符“滅”→“メイス”
 九天魔符“切”→“セピレード”
 九天魔符“癒”→“ユウチャリティー”
 九天魔符“死”→“シオン”
 九天魔符“朧”→“ロキ”
 九天魔符“砕”→“サイス”
 九天魔符“?”→“???”
 九天魔符“?”→“???”
 九天魔符“?”→“???”

九天魔符“滅”(初期):
 呼び方はメイス。
 カード再生と同時に長柄のトイハンマーへと姿を変える。
 空間の破壊や再生させる能力を持つ。また、幽体のような
 実体を持たない存在にも有効。しかし、実体を持つ者や
 物には大したダメージを負わすことが出来ない。
 カード再生詠唱は「我は喚ぶ、破滅のメイス!」である。

九天魔符“切”(初期):
 呼び方はセピレード。
 カード再生と同時に真紅のリングへと変化し、使用者の
 利き腕に自動装着される。
 真空波による鎌鼬から実剣まで、刃に関係する物なら
 ありとあらゆる存在を喚ぶことが出来る。
 最大射程は十メートル。
 汎用性も高く、使い勝手も良いが、威力が完全に使用者の
 技量によって決定されてしまう不安定な要素も持っている。
 カード再生詠唱は「斬刑に処せ、セピレード!」である。


 以上がEP3の簡単な現在考えてある初期設定です。

 では、ここまで読んで下さって有り難う御座いました。
 それでは、次回作でw 

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