PSO〜血戦〜

片桐 / 著



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恒星間航行移民船団パイオニア2内でヒューマーと呼ばれる職業を生業としているジャンクと蒼いフォルムが特徴的なアンドロイドでヒューキャストのデスの二人は予期せぬ事態に舌打ちした。
 
二人が総督府の依頼でアルティメット区画森エリアに大量出現したエネミー達の掃討作戦依頼を受けて二時間が経過した。
 
凄腕のハンターである彼等には簡単な依頼だった。
 
セントラルドーム正面出入り口前で一人の青年が二人に立ちはだかるまでは―――。

「デュオ、どういうことか説明してくれるな?」
 
目の前にいるのはジャンクに似た出で立ちのヒューマーで金髪碧眼のデュオだった。

「申し訳ありません。ここから先は何が何でも通すわけには行きません。例え禁忌を破っても私はここを護る」
 
デュオの雰囲気が徐々に人から人でない何者かへと変わっていった。

「本気だな、デュオ」
 
ジャンクは静かにアイテムボックスから赤色の刀身を持つ赤ソードを喚び出した。

「この依頼の裏にはある総督府の思惑が絡んでいます。奴等の思い通りにはさせない」
「デス、覚悟を決めろよ?」
 
ジャンクが振り返るとデスは長柄の鎌ソウルイーターを構えながら肩をすくめた。

「割に合わないが仕方ないな。アイツがあそこまで言うんだからな」
 
ジャンクは苦笑した。

「デュオ、一つ約束しろ。俺達が勝ったらここを護る理由教えろよ?」
 
碧眼が真紅の瞳へと変わると同時にデュオの雰囲気も完全に変わった。
 
真紅の双眸以外、見た目こそ変わらないがそこにいるのは少なくとも二人が良く知っているデュオではなかった。
 
そこには紛れもなく人間ではない《ナイト・ウォーカー》古吸血鬼のデュオがいた。

「教えよう。俺に勝てたらの話だけどな」
 
デュオの姿が掻き消えた。

「ジャンク、左横だっ!!」
「二人とも・・・さぁ、始めようかっ!!」
 
デュオの放った右手刀がデスの言葉に反応してジャンクが盾代わりにした赤ソードを横一文字に斬り裂く。
 
刹那の差で避けたジャンクは同じく赤色の刀身を持つ赤セイバーを喚び出すとデュオに向かって斬撃を放った。

「合わせろ、デスッ!!」
 
デュオが放った衝撃波によって吹き飛ばされるジャンクの背後からデスが跳躍。
 
振り上げられた大鎌が風を斬り裂きながらデュオ目がけて振り下ろされた。

「甘いっ!!」
 
デュオは大鎌の刃の部分を右手で無造作に掴むとデスを大鎌ごと放り投げた。
 
デスは空中で身を捻ってジャンクの横に着地した。

「流石に一筋縄ではいかないな・・・・」
「デス、当たり前だ。アイツの力はこんなモンじゃないぞ」
 
デスはデュオを見据えながら一歩踏み込んだ。

「ジャンク。今から俺のメタルマッスルのテンションを上限ギリギリにまで引き上げる」
「解った、合わせる」
 
ジャンクの言葉よりも速くデスは蒼い疾風と化した。
 
デュオに一瞬で肉迫すると嵐のような大鎌の斬撃を放ち続ける。

「無駄だ」
 
常人では視認不可能な斬撃の全てをデュオは軽く両手で捌き続けた。

「デュオッ!!」
 
右直ぐ横で赤セイバーを振り上げたジャンクの姿がデュオの視界の中に入った。
 
デスの攻撃によって両手がふさがっている今ではジャンクの攻撃に反応することが出来なかった。

「これが狙いかぁ!!ナメるなよぉぉぉっ!!」
 
デュオは咆哮と共に大鎌の刃をわざと右腕に貫かせ右腕の筋肉で絡め取ると同時に左手で赤セイバーの刀身を噛んだ。

『クッ!!』
 
ジャンクとデスの声が重なった。

「見せてやろう。《空識者》能力とテクニックを融合させるとこうなる」
 
デュオの両腕が雷光を纏った。

「ラ・ゾンデッ!!」
 
数十万ボルトにも及ぶ圧倒的な雷撃の奔流がその場一帯を包み込む。

「デュオオオオオオオ!!」
 
咆哮と共に雷光が斬り裂かれた。

「馬鹿な雷光が斬り裂かれたのか?!」
 
雷の中からデスがデュオに肉迫。
融解した大鎌を投げ捨てて拳を乱打。 

絶対有り得ない反撃に動揺したデュオはデスの放った
拳撃の全てを捌ききれない。

「グッ、ガハッ!!」
 
数発の拳を受けてのけぞりながらもデュオはデスの胸に左手を押し当てると零距離から衝撃波を放つ。
放物線すら描けずにデスは吹き飛ばされた。

「デュオ」
 
左からジャンクがデュオに向かって赤セイバーを振り上げながら跳躍。

「雷よ」
 
雷の奔流がデュオの左手の中で集束形勢を開始。
一振りの西洋剣へと変化した。

「デュオォォオオオオッ!!」
「ジャンクッ!!!」
 
赤色の刀身と雷の刀身がぶつかり合う。そして―――――。

「何ぃ!?」
 
叫んだのはデュオ。
赤色の刀身が雷の刀身を斬り裂く。

「借りは返すっ!!」
 
赤色の刀身が振り下ろされた。
デュオは左肩から右脇腹にかけて斬り裂かれた。

「まだまだぁ!!」
 
斬り裂かれてもなお立ち続けるデュオの視界一杯に金色が広がった。

「これで最後だっ!!」
 
デスが両手で持っているのは芸の道と呼ばれる
金色の巨大ハリセン。それを一気に振り抜いた。
 
吹き飛ばされたデュオは激しく地面に激突してピクリとも動かなくなった。

「終わったのか・・・・?」
 
二人にもう戦う余力は残されていない満身創痍の状態だった。

「人間の絶対的な意思力こそが《空識者》能力に対抗する唯一の力。それ故、人間を滅ぼさず・・・・畏れてるからこそ・・・・・」
 
デュオはゆっくりと立ち上がった。

「お二人の絶対的な意思力が私の《空識者》能力を一瞬だけ凌駕したのですね・・・・」
 
まるで何事もなかったかの様なデュオの姿を見てジャンクとデスはその場に座り込んでしまった。
口調もいつの間にか元に戻っていた。

「私の負けですね」
 
デュオは優しく微笑んだ。

「約束でしたね。私がここを護っている理由は・・・・」
 
デュオの言葉を遮るかのように突如、空が光り輝き始めた。
顔を上げたジャンクとデスは目の前の光景に絶句した。
三人の上空では金色に輝く美しい巨大な鳥が空を舞っていた。

「あれが不死鳥フェニックスです。
総督府の一部の人間はこの掃討作戦を利用してフェニックスを捕まえようとしたんです。
生き血をすすり不死を得るために・・・・」
 
絶世の美しさを持ったフェニックスを見ながら二人は苦笑した。
恐らく孵化したばかりなのだろうフェニックスの顔立ちは何処か幼さを残していた。

「孵化するまでフェニックスを護るのがここを護っていた理由です」
 
フェニックスは三人の頭上を数回旋回すると遙か彼方の空へと飛び去っていった。

「そりゃ、必死になるわなぁ・・・・・」
 
デュオの目的を知りデスは疲れたように呟いた。

「さっ、帰りましょうか?」
 
デュオの言葉を聞いてジャンクはその場に倒れそうになった。

「俺達って勝ったのか?」
 
ジャンクの問いにデスは「さぁ?」と言って肩をすくめた。

「もちろんお二人の勝ちですよ」
 
デュオは二人を見ながら微笑んだ。

「勝ちにも色々あるように負けにも色々あります。本当の負けとは、心が折れること、相手を理解し、認め、受け入れてしまうことだと私は思っています」
 
デュオは「ですから」と呟くと一言。

「お二人の強烈な意思力を認めてしまった私の負けなんですよ」
 
達成感で充実したデュオの無邪気な微笑みを見ながら二人はただただ苦笑するばかりであった・・・・。

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−あとがき−

如何でしたでしょうか?
PSO〜血戦〜でした。
 
今回はとにかく戦闘メインの内容です。
内容は最早PSOではないですがそこら辺は大目に見て下さい。
それでも、お楽しみ頂けたら嬉しいです。
では、ここまでご愛読して下さって有り難う御座いました。
 
それではw

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