PSO〜ライメイ〜 |
片桐 / 著 |
| 中性的な美少年に近い容姿を持つレイマールのメイファは、妙な気配を感じて立ち寄った居住区外れの裏通りで、物言わぬ肉塊となっている少女の姿を見て顔をしかめた。 その少女を囲むようにして五人の男達が立っていた。 全員が真紅のヒューマースーツに赤い髪で統一されたヒューマー達。 メイファは便宜上、左端の男から一号、二号、三号、四号、五号、と勝手に命名した。 「何でその子を殺したの?その子はまだ何の『力』も持たない子供よ?」 「悪を倒して何が悪い? 太古の昔から化け物は正義の使者達によって倒されるモノだ」 三号が勝ち誇った笑みを見せながらメイファに言い放った。 人間は遙か昔から『化け物』と呼んで忌み嫌っている人外の異生命体―――闇の眷属《ナイトウォーカー》達を『悪』と決め付けることが多かった。 その異形の姿、能力、力、生命力、どれをとっても人間を凌駕する《ナイトウォーカー》達を人間達は目の敵にし続けた。 大多数の人間は目の敵にしている根幹的な理由が自分達にはないモノを持っている『化け物』に対しての『妬み』からきていることを知らない。知ろうともしない。 「その子も悪なの?」 「そうだ」 四号が少女の骸をメイファ目掛けて蹴り飛ばした。 少女の骸を一瞥したメイファは少女が目の前の五人に長時間の性的暴行を受けた後に何度も刺し貫かれて死んだのだと一瞬で理解した。 メイファの心の奥からドス黒い感情が滲み出てきた。 それは、殺意。 「カス共が・・・・・」 メイファは静かに呟いた。 常日頃から『殺意に呑まれるな』とデュオからアドバイスされていたメイファも今回だけは自制することが出来なかった。 いや、自制する気がなかった。 「ライファ、出番よ。私は能力の開放に全力を尽くすわ」 そう言うとメイファはゆっくりと両眼を閉じた。 大きく深呼吸してメイファは両眼をゆっくりと開いた。 その双眸は真紅に染め上がっていた。 「お待たせした。これからは、己が、メイファの半魂、このライファがお相手しよう」 言いながらヘアバンドを外す。 闇より深い黒色の長髪がまるで意思ある者かのように宙を舞う。 その得体の知れない雰囲気に五人は一斉にアイテムボックスから赤身の大剣―――赤のソードを喚び出した。 「貴様、何者だ?」 「先ほど名乗ったばかりだ。この、うつけ者」 メイファが、いや、ライファが二号の問いに素っ気なく答えた。 「そなた達にお見せしよう――――真の『悪』を」 ライファの目の前にそれはいきなり出現した。 それは一見するとライフルに酷似しているが本来銃身があるはずの場所には鋭利な両刃の刀身が付けられていた。 「八冥神器が一つ“エンハンスソード”」 ライファはエンハンスソードのグリップを右手を握ると悠然と構えた。 その姿に男達は息を呑んだ。 「クソがっ!!」 先に動いたのは四号だった。 数回フェイントを混ぜながら一気にライファに駆け寄ろうとするも、ライファの目の前でいきなり派手に転んだ。 「何だ?!」 呻く四号の姿を見て他の男達の顔が青ざめた。 「どうした?何を寝ている?この己を攻撃するのではなかったのか?」 ライファは残酷に微笑んだ。 四号は呻きながら起き上がろうとするも何故かまた転んでしまった。 「アれッ!?」 素っ頓狂な声をあげながらも四号は何度も立ち上がろうとするがその度に転んだ。 その額には粘っこい汗が浮かんでいた。 「どうした、立ってみろ?自らの足でな・・・・」 四号は恐る恐る自分の足と血で濡れているエンハンスソードの刀身を交互に見た。 そこには、あるはずの足はなく見慣れたアスファルトの地面が見えるだけだった。 「!」 エンハンスソードによって両断された足を見て絶叫を放とうとした四号にライファは一気に駆け寄ると同時にその顔面を蹴りつけた。 四号が崩れ落ちる姿を横目で確認しながらライファは残りの四人目掛けて疾駆。 ライファの疾走に四人は直ぐさま散った。 一号と三号がそれぞれ両翼からライファ目掛けて吶喊してきた。 「うつけ者め」 一号が振り下ろした赤のソード目掛けてエンハンスソードを振り上げる。 ライファがトリガーを引くと同時にエンハンスソードの刀身が赤熱化。 赤のソードの刀身を斬り裂くと、ライファは一号の顔面目掛けて左掌底打を放った。 頭蓋骨全体に亀裂が走る感触を感じながら背後から迫る三号にエンハンスソードの刀身を向けながら再度トリガーを引く。 刀身から放たれた衝撃波をモロに喰らった三号は弾丸のように放物線を描くことなく遙か彼方へと吹き飛ばされてしまった。 瞬時に一号と三号を屠ったライファの前後に二号と五号が肉迫した。 「死ねっ!!」 ほぼ同時に水平に振られた二振りの赤のソードの刀身がライファの身体を横一文字に両断した――――はずだった。 二人の目の前でいきなりライファの姿が掻き消えた。 「たわけめ!己はここだ!」 上空から響く声に反応して顔を見上げた瞬間、二人は戦慄した。 自分達の頭上に漆黒の翼を生やしたライファが浮かんでいた。 その姿は正に黒天使。 黒天使は獰猛に微笑みながら眼下の二人目掛けてトリガーを引いた。 刀身から放たれたのは衝撃波ではなく重力波。 通常の十数倍の重力加圧攻撃をモロに喰らった二号と五号の全身の骨が悲鳴のような音をたてながら砕けた。 想像を絶する痛みに二人は気を失った。 地上に降りたライファは倒れている男達に哀憐の瞳を向けた。 ((やり過ぎたかな?)) 「いや、まだ生温い。殺さなかっただけでも感謝して欲しいものだ」 頭の中に響いてくるメイファの言葉にライファは呟いた。 ((それにしても、エンハンスソード、凄い威力ね・・・・)) 「違うな。強いのはこのソードの性能を完全に引き出している己等だ」 ライファの言葉にメイファは微苦笑を浮かべた。 「それに、そなたは己のことを想ってレイマールに転職したのであろ?」 ((貴方はレイマールの方が相性が良いみたいだし。このソードを使いこなすためにはフォースとレンジャーの素質がなければダメだし・・・・ね?)) 「そなたに感謝を」 ((気にしないで。主人格である貴方は私達の中で眠る《空識者能力》の過剰暴走を防ぐために 今まで眠っていたんだし・・・感謝するのは私の方よ)) メイファの言葉にライファは救われたような気持ちになった。 ((でも、この男達を痛めつけても痛痒を感じない私達ってやっぱり『悪』なのかな?)) ライファは不敵に微笑む。 「無論、己等は『悪』だ。本当の『善』なる人物はほんの一握りしかいない。 それに『悪』を裁けるのは『悪』だけだ。人は『悪』だからこそ『善』に憧れ、『善』を渇望し、『善』になろうとする。その思いがあるからこそ人は『未来』を見据え『夢』や『希望』や『愛』等を抱いて『明日』へ進むことが出来るのだと己は考えている。『悪』と『善』は表裏一体なのだとな」 ((貴方らしい考え方ね)) メイファの言葉にライファは不敵に微笑んだ。 「さて、軍警察共にこのうつけ者共を回収してもらわんとな」 ライファは慣れた手付きで軍警察に匿名のメールを送った。 「そうそうに帰宅するとするか。あのたわけも待っていることだろう」 ((待って、あの子は!?)) 「案ずるな。既に昇天させた。悠久の時を越えて再び転生するだろう」 ライファの言葉に呼応するかのように少女の骸が七色の粒子になって散っていく。 七色の粒子を見つめながらライファは少女の来世での幸せを祈った・・・・。 |
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− あとがき − メイファの転職話しのPSO〜ライメイ〜は如何でしたでしょうか?お楽しみいただけたら私も嬉しいです。 毎度のことですが誤字脱字の類がありましたら申し訳ありません。 さて、今回はメイファのピン作品です。 本作に初登場しているライファのキャラは如何でしょうか? かなり独特な言葉を話す少女なので・・・・w 皆さんに愛されるようなキャラに育ってくれれば良いと思う今日この頃です。 今回は本作の説明捕捉として本作に出ている“八冥神器”と“エンハンスソード”について軽い説明をしようかと思います。 八冥神器 武器作りの達人のとある《ナイトウォーカー》が趣味でつの超兵器の総称。 アイテムを遙かに凌駕する能力と威力を秘めている。 名前:エンハンスソード 形状:銃身の変わりに刀身がついたガンブレイド型 使用可能職種:レンジャー各種 長所:八冥神器で最も汎用性に優れている。 使用者の任意によって様々な種類の衝撃波を 放つことが可能。 また、刀身が赤熱化することによって様々な モノを容易に斬り裂くことが出来る。 短所:汎用性に優れている分、決め手に欠ける。 特殊能力:無し 以上が軽い(軽すぎ?)説明です。 これからの作品でさり気なく出ていると思います。 一応、使用許可の取れた使用者と八冥神器の八種の名前は以下の通りです。 神力絶刀(セイバー型)→??? エンハンスソード(ライフル型)→メイファ マンイーター(グレイブ型)→ジャンクさん ラヴィス=ノヴァ(ソールイーター型)→デスさん 朱雀(ソード型)→??? シャインナックル(ナックル型)→??? 黒のバトン(スライサー型)→??? D−DISK(スロットアイテム型)→??? ちなみに???は使用者が未定という意味です。 後々、許可取っていこうと思います。 それでは、ここまで読んで下さって有り難う御座いました。 では、次回作でw |