デートにいこう



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けたたましく部屋の中を目覚まし時計の音が鳴り響く。
時計の針は8時を指している。

幾つかの可愛らしいぬいぐるみと共にベッドの枕元にある時計に、少女の手が伸ばされ慣れた手つきであっさりと止める。

部屋の主は未だに布団の中である。

そのままその手は何事も無かったかのように布団の中へと戻される。

そして職務のひとつを遂行できなかった目覚まし時計は、残された時計としての職務を忠実に護り続ける。そう、時を刻むという職務を。




長針がぐるりぐるりと2回ほど巡った頃、ようやくベッドの布団に動きが生じた。

大きく欠伸をしながら、まだ完全に目覚めきっていない頭で、むにゃむにゃと時計のほうを見る。

「・・・10時ジャスト。 まだまだ眠れるじゃないのよ、もったいない」

そう、いつもの休日は用が無ければ昼過ぎまで惰眠を貪るのを日課としている彼女としては日曜の10時は早起きの部類に入っていた。

2度寝を決め込もうとして布団にもう一度潜り込もうとして部屋を見渡すと、そこは凄まじい状況だった。

部屋中に衣類が投げ出されて机の上、テーブルの上は言うに及ばず床すらも散乱したワンピース、スカート、Yシャツ、ブレザー、セーターといったものから、果てはブラジャーやパンツといった下着類までカラフルな色合いを見せて巻き散らかされていた。

「・・・・えっと」

部屋の状況を見渡し、彼女の寝起きで鈍った頭の中に昨日の晩の出来事が思い出されていく。

昨夜はクローゼットから自分の手持ちの衣装を取り出してあーでもないこーでもないと散々悩んで悩みまくって今日の衣装を決めた。

その今日のための衣装は机の上にちゃんと綺麗にして畳まれている。
ちょっぴり大人な下着も一緒で。



そう今日はデートなのだ。

生まれて初めてのデート。



この前のバレンタインの日に勇気を出して、というか悪友に騙されたというか担がれたというか、気が付けば手作りチョコを持って彼に告白していたりする。

まったく今思い返してもあのときの自分は柄じゃなかったと思い返される。

もう、『恋する乙女大爆発!!!』って感じで暴走していたといえる。

でも、まぁ結果オーライ。

その日から彼氏持ちと呼ばれる身分になったんだしね。

で、取り敢えずは初々しいカップルをしてたわけよね。
下校時に一緒に帰ってみたりとかして。

最初のうちはなに話して良いか分からなくなって、お互いに沈黙してズンドコズンドコとただ黙々と歩いていたりとかしてたし。

ま、持ち前の明るさから、悪友は能天気なだけと言い放つけど、今ではちゃんと話しながら帰れるようになってるし。

で、ホワイトデーも近いこの日曜日にデートをしようとなったわけで。

で、その衣装を決めた後の惨状がこの部屋の有様だったりする。

そのあと、初デートということで興奮して希望というか、憧れというか、ぶっちゃけ妄想を自己展開してしまった。その内容は乙女の秘密として永久封印ものであったりする。
それで余計に寝付かれなくなってしまい気が付けば外が明るくなりだしていたりして、慌てて力づくで、眠りに落ちた。



そして結論は出た。



「うきゃーーーーーーーーーーーーー!! 」

彼女の口から出た絶叫が部屋の中を揺るがす。
時計は10時10分を示していた。

「嘘、嘘、うそーーーーーーー!!!
なんで目覚ましが鳴らないのよーーー!!!」

って、自分で止めましたが。

「ま、まさか自分で無意識に止めたっていうの〜〜〜〜〜!!!」

はい、その通りです。

「またやっちゃったわけーーーー!!」

・・・常習犯でしたか。

ベッドの上にちょいと見た目は不細工なネコといった絵柄があちらこちらにプリントされたピンク色のパジャマを着たままで仁王立ちになってパニックっていた。

まぁ、いくらパニックっていても時間は戻らないということで頭を切り替えて、さっさとデートのための支度を始めようとベッドから降りて部屋の窓に掛かっているカーテンを開け放った。

外はいい具合に晴れ上がって・・・・・・いなかった。

「はい〜〜〜?」

窓の外には天から水が降り注いでいた。
雨である。

「ちょっと、ちょっとまってよーーーー!!
昨日の天気予報じゃ『晴れ』っていってたじゃないーーーーーー!!」

天気予報を信用したのが間違いでしたね。

「デートの衣装プランが全部パーじゃないーーーーー!!!
じゃ、この三つ編みにして寝て癖をつけた髪も意味無いじゃないーーーーー!!」

昨夜のデート衣装プランでは『お嬢様風』ということをテーマに決めたのである。
まぁ、あくまで『風』であるが。
自分がお嬢様と呼ばれるような人種でないのは分かっているが、やっぱ、そこはそれということで夢を見たいじゃない。
まぁ、悪友がソレを見たら腹を抱えて悶絶することは請け合いではあるけど。

まぁ そのプランも雨で文字通り流れてしまったわけではあるけど。


三つ編みにしていた髪を解きながら、頭の中を高速、いや光速で今日の新たなデート衣装プランを紡ぎだす。


今日は雨である。

ならばこの前買ったばかりに新しいお気にの傘をデビューさせよう。

そうするとレインシューズはあれを選んでっと。

上着の候補はこれと、これと、これとで

スカートにするとして、これと、これと、これかな?

それと、これだと色が合わないからダメで・・・

んっと、それだとこれのほうがいいかな。


と、あーだ、こーだ昨夜の二の舞になっていたりする。


そんでもって答えが出たところで時計を見ると10時半・・・

待ち合わせの時間は11時半。

1時間あれば何とか間に合うけど、初デートってのに『何とか』で済ます訳にはもちろんいくわけない。

携帯電話を掴み、パッパッパッツと彼にメールを送る。

内容は『デートの待ち合わせに遅れるからごめんね』というもの、それを瞬時に打ち込み、絵文字とか、絵文字とかで飾り立てて送った。

「よしっ! これで少しは時間の確保は出来るはず!!」

部屋を飛び出してバスルームに向かう。
折角の髪に付けたウェーブだけどこの雨では途中で取れてしまう。
そうなると間抜けである。

昨日の晩の努力はどぶ川に捨てて、シャワーを浴びて癖をとることにする。

バスルームに入る前にママが『食事をどうする?』と聞いてくる。

ゆっくり食べている時間はない。
しかし、デート中にお腹が鳴るのは勘弁して欲しい。
それと彼の前でパクパク食べて大喰らいだと思われるのも嫌である。

「トーストを1枚・・・やっぱり2枚焼いてて!!」

そうママに頼んでバスルームに入る。

ホントは朝シャンだけにしようと思ったけど、寝汗とかはやっぱり流しておきたいからシャワーを頭から浴びることにする。

さっさとボディソープを手にとって自分の体を磨く。
昨日の夜にしっかりと赤くなるほど磨いているから今朝はそこまでする必要は無い・・・と思う。


その最中、胸に目をやる。
小ぶりながらも形が良くて、たぶん感度もいいはずのバスト。

むにむにと自分で揉んでみる。

「・・・あん」

ちょっぴり声がでちゃった。


もしかしたら今日彼が揉むかもしれないとか、妄想を爆発させてみる。

「気に入ってもらえるかな?」

なにが? もちろんおっぱいである。

「もしかしてもっと大きいほうが好みなのかな?」

と、不安になってみたりする。
ま、間近で悪友の凶悪なまで規格外といっていいサイズをいつも目にしている身としてはちょぴり自信喪失気味なのも仕方ない。

なんせ、悪友のおっぱいはちょっと動くだけで胸がぼよよ〜〜んと自己主張しまくりの逸品であったりするから。

ちょっぴりブルーが入ってしまった。

ブルンブルンと頭を振ってネガティブな考えを追い出しバスルームから出る。
体にバスタオルを巻きつけたままでドライヤーを使って髪を乾かしていく。

その間にママが焼いてくれたトーストに齧り付く。

パパが家の中にいないから出来る無作法なんだけど。
ママに聞くとパパはいつものように趣味の魚釣りに朝早くから出かけたそうだ。
毎度のセリフの『今日の晩飯はパパに任せろ』と言い残して。
これが叶った例は私が知っている限りでは皆無に等しかったりする。

でも、パパが今朝この時間に無かったのは幸いである。
やっぱり一人娘なせいかやっぱり家のパパも私には大甘なんだけど、男女交際には五月蝿かったりするというか娘に夢見すぎって感じだったりする。

その癖、私とママのどちらかを選ぶとしたらとなるとさっさとママを選ぶし、というかママの眼力に屈したってことだったりするから今ひとつ全面的に私の味方と信頼しきれなかったりする。

まぁ、夫婦仲がいいからいいけど、というかあの年になってもバカップルな親を見るのはちょっぴり痛かったりするけど。

そんなこんなで、テーブルの自分の席の前でママがニコニコというか、ニタニタと笑っているのを罰が悪く感じながら、トーストを2枚続けて紅茶と一緒にお腹に収めて、さっさと自分の部屋に戻ることにする。

携帯に彼からのメールで『分かった』とだけが送られてきていた。
いかにも彼らしいメールに笑みが浮かぶ。

時計を見ると11時。

バサッとバスタオルを勢いよく脱ぎ、生まれたままの姿を部屋の中に晒す。もちろんカーテンは閉まっていることを確認してからの行動であるのは言うまでも無い。

そして昨夜のうちに選んでおいた下着を手に取る。

薄いピンクで大人な感じのレースを使ったお揃いのブラとショーツ。
お値段のほうも学生である身の自分にとってはちょっぴり高めのセット価格で7000円の代物。

もしかしたら、もしかするし、そうなったらやっぱり女の子としてはやっぱり綺麗な姿を見て欲しいし、やっぱりそうなると安いのは見せられないしとかなんとか、女の意地とか見栄とかで。

まぁ、妄想暴走してるってのは否定できないけどね。
しかも真っ裸で自分の下着を握り締めていやんいやんと体をくねらせていたりしてるけどね。

・・・・・他人には絶対見せられない姿だわね。


まぁ、何はともあれ、やっぱ女の嗜みよね。
うん、そうしておこう。

下着を着終わったあと、あらたに選びなおしたデート服を身につけていく。
そのあと用意していたトートバックから小さめのディバックへと小物を移し変えていく。

その中身で、見られてはいけないものを慎重に隠すように収めて。

えっ? なにを入れたかって・・・

えっとね、替えの下着でしょ。
やっぱ必要になるかもしれないしさ、なんでいるのかとは聞かないでよね。

あと他にというと・・・・
悪友に渡された避妊具のコンさんもはいっています。


悪友曰く。
相手が持ってきているならいいけどもっていなければちゃんと自分からそれ渡してしてもらいなさいってオギノ式とかあるけど、私たちはまだ10代で生理不順とかも多いからアレは当てにならないから盲信しちゃダメよ。避妊は女にとって大事なんだからね。気持ちいいからとかナマがいいとか相手に言わすんじゃないわよ。あとで泣きを見る羽目になりたくはないならね。


とまぁ、私よりも大人の階段を一段とも二段とも上にランクアップしている悪友の露骨な言葉に真っ赤になりながらもしっかり耳ダンボで聞いていました。

そのあと、コンさんの装着の仕方とかもしっかりと教わりましたが・・・

このコンさん、ママはともかく、パパにだけは見つからないようにしないとね。
なんてったって夢見る父親だし。


服を着替え、髪を整えるために鏡の前に立つ。
手馴れた感じでいつものポニーテールをつくる。そしてとっておきのリボンをだして結ぶ。

唇にはいつもの無色のリップスティックじゃなくてちょいと背伸びをしたグロスをつけてみる。

彼は気づいてくれるかなとワクワクドキドキしながら装っていく。
そして柑橘系の香りのする香水をくどくならない程度に纏わせて、出来上がり。


そこで時計を見ると最初の待ち合わせ時間だった11時半。


家を出て待ち合わせの場所へと向かう。
もちろん外は雨だからお気に入りのおニューの傘を差して。

出かけにママが『夕飯は赤飯ね』とニヤリと言葉が書いていそうな笑顔を向けてくれていたりする。

絶対ママは楽しんでいる!

そう思うも歯向かえない我が身を嘆くばかりであるのでそのことは自分の心にある棚の上に放り投げておくことにする。

雨の中、決して走らず。だっていつもの制服を着ているわけでもないし、折角の服を雨で濡らしてしまわないようにゆっくりとそれでも急いで彼との待ち合わせへと向かう。



待ち合わせの場所で雨宿りが出来る場所で、彼は文庫本を読みながら私を待っているのを見つけた。

そして私の出来る最上級の笑顔を浮かべて彼の元に向かう。





さぁ、デートをはじめよう。

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